生贄教室
「さっき……高校受験の話しになったの。ここを出て、絶対に同じ高校へ行こうって」
郁が震える声で説明し始める。
「だけど元々私が行きたい高校はR高校だったんだよ。市内の普通高校」

それは偏差値は決して高くない、特別進学クラスでなくても行ける高校だった。
Sクラスの全員はもっと偏差値の高い高校を目指している。
「なのに雄太が一緒にいい高校を目指そうとか言い出したから!」

その時のことを思い出したせいで、郁が取り乱してしまったみたいだ。
「郁だって同意したじゃないか」

「本当は嫌だった! 勉強だって雄太ほどできるわけじゃないし、好きでもないし。本当ならこんなに勉強漬けの毎日を過ごすことだってなかったのに!」
「全部俺のせいか? 受験に賛成して頑張ってきたのは自分だろ」

普段喧嘩をしたところを見たことのないふたりの言い争いは止まらない。
見かねた恵子が郁の体を支えるようにして教室後方へと移動した。
「郁、大丈夫?」
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