生贄教室
でも、言われてみればそんな素振りをしていたことがあったかもしれない。
私の方が勉強が不得意だから、それを笑われることだってしょっちゅうだった。

そんな私がSクラスに入ったことで、雄太は心の中では笑っていたんだろうか。
バカが無駄な努力をしていると、陰口を叩いていたんだろうか。

雄太が下品な笑みを浮かべて自分の悪口を話している様子が脳裏に浮かんできて、すぐにかき消す。
「雄太がそんなことするはずない」

信じたくなくて呟いてみるけれど、その声は自分が思っていたよりも弱々しいものになってしまった。
「信じたくないのはわかるよ。だけどこんな状況になったんだから、目をそむけちゃダメだよ。下手すれば今度は郁が……」

そこまで言って言葉を切る。
次は郁が生贄にされる。

そう続く言葉が浮かんできて郁は膝を抱えて顔をうずめた。
生贄になんてなりたくない。
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