生贄教室
☆☆☆

恵子が雄太に惹かれ始めたのは3年S組になってすぐの頃だった。
それまで雄太とはまるで面識がなかったのだけれど、クラス内での成績の良さや見た目の好みも相まって、どんどん気になる存在にのし上がってきた。

どうにか距離を縮めたくて、恵子は何度も自分から雄太に話しかけた。
「おはよう。今日は暑いねぇ」
「おはよう。そうだなぁ」

けれど、それ以上の会話はなかなか続かなかった。
雄太の隣にはいつでも郁がいたからだ。

恵子が雄太と会話したいと思っていても、郁がそれをかっさらっていく。
郁はぽっちゃり体型で、少し鈍くて、勉強もそれほど得意じゃない。

自分とは正反対のタイプだ。
同時にどうして雄太があんな子を彼女にしているのか疑問だった。

だって、どう見ても自分の方がいい女だ。
スタイルだって運動神経だって学力だって負けていない。
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