生贄教室
すると昂輝は眉間にシワを寄せる。
「雄太が郁の陰口?」
「恵子がそう言ってた」

「そんなの聞いたことない。あいつはいつでも郁にデレデレだし、今回で喧嘩は初めてなんじゃないか?」
やっぱり、昂輝も自分と同意見みたいだ。
「恵子が嘘をついてるのかな」

「どうして恵子が嘘をつく必要があるんだ?」
そう聞かれるとよくわからなかった。
恵子はクラス内で最も大人びていて、誰もが羨望の眼差しをむけている。

今までに沢山の男子生徒たちから告白された経験もあるみたいだ。
そんな恵子がくだらない嘘をつく理由がわからなかった。
「とにかく、雄太に伝えたほうがいいんじゃないか?」

「そうだよね……」
伝えにくいことだけれど、雄太が誤解される恐れがある。
これは本人に伝えておいた方がよさそうだった。
美麗と昂輝は1人で椅子に座っている雄太へ近づいて行ったのだった。
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