生贄教室
だけどそれにも答えずにずんずん歩いていってあっという間に恵子の前にたどり着いていた。
「俺は郁の悪口なんて言ったことがない。どうしてそんな嘘をつくんだよ」

怒鳴るかと思ったが、雄太の声は冷静だった。
それどこか、泣いてしまいそうな震えた声だ。
だからこそ、真実味があった。

恵子が絶句し、青ざめる。
「わ、私は別になにも」

咄嗟にとぼけようとする恵子に「郁に変なこと吹き込んだだろ!」と追い打ちをかける。
恵子は雄太から視線をそらして床を見つめた。

木目をひとつひとつ視線で追いかけていきながら、どうすればいいのか考える。
だけど名案は何もう浮かんでこなかった。
1時間後に死ぬかも知れない。
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