生贄教室
同時に、どうしてこの状況で嘘をついたのかも、理解できた。
恵子は少しでも雄太に自分を見てほしかったのだ。
雄太と郁が喧嘩を始めたときには今しかないと思ったに違いない。

ふたりの関係を更に引き裂くために、郁に嘘を吹き込んだのだ。
「本当は高校に入学するまで我慢しようと思ってた。どうせ郁は受からないだろうから、雄太と同じ高校に入学できるのは私だし……!」

「ちょっと待ってよ。ずっとそんな風に思ってたの?」
郁が再び青ざめる。
恵子がそんな風に思っていたなんて、少しも気が付かなかった。

ショックと恐怖で郁は雄太の腕を強く掴む。
「そうだよ。だってあんた勉強できないじゃん」
恵子がふふっと鼻で笑う。

もう自分を隠しておく必要はないと判断したのか、あからさまに郁を見下し始めた。
「デブだし、運動神経も悪いし。どうして郁が雄太と付き合ってんの? 全然釣り合わないんだけど」
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