生贄教室
それだけだった。
「あ……あはは」
立ち上がった恵子は無意識のうちに笑っていた。

能面になったクラスメートたちを見て、自分はこのクラスに打ち解けていなかったのだとわかった。
クラス内での立ち位置はちゃんと理解して、大人になったふりをしていただけだったからだ。

誰とも本音を分かち合わず、わかったふりをしてきた。
自分はS組の中でこんなにちっぽけな存在だったのだと、ようやく理解した。

「ははっ」
笑った瞬間、後ろから体を掴まれた。
大きな手が恵子の体を持ち上げる。

巨大化した化け物の腕力は凄まじく、恵子の体はあっという間に握りしめられていた。
血が化け物の指の隙間から滴り落ちていく。
そして真っ赤な口の中へと投げ込まれたのだった。
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