生贄教室
「それ、すごいわかる」
「でしょ? 体がベタベタなんだよね」
「じゃあ、外に出たら一緒に入ろうか」

「なにバカなこと言って」
美麗は昂輝の肩を叩く。
想像しただけで真っ赤になってしまう。

「一緒にお風呂に入って、それからゆっくり眠るんだ。手をつないで」
昂輝が美麗の手を繋ぐ。

暑いくらいの体温が伝わってきて、まだお互いに生きているのだと実感することができる。
ドクドクと、脈打つ音までが聞こえてきてきそうな距離感だった。

「そしたらさ、もう勉強なんてやめて毎日一緒に遊ぼう。色々なところへ行こう」
「それいいね。私ももう勉強なんてしない」
将来のための勉強だったけれど、今はもう将来があるかどうかもわからない。

1時間後のことが未知なのだ。
「勉強しなくなったら楽しいだろうな。いくらでも時間が取れる」

「遊園地も水族館も動物園も映画館も行ける」
「本当だな。それで車の免許を取って、日本一周もできる」
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