生贄教室
どうか間違いでありますように。
行き先がかぶっていますように。
そんな願いも虚しく、赤ペンはあたりの文字に到達してしまった。
全員の視線が郁へ向かう。

その顔は悲しげだったり、無業情だったり、唇を引き結んでいたりする。
そんな視線に囲まれて郁は拳を握りしめた。
「も、もう1回しよう。な? こんなのやり直しだ」

雄太の声が震える。
誰もなにも答えなかった。。
ただ同情するような表情があちこちから自分を見ているのがわかって、腹がたった。

そんな目をするなら誰か代われよ!
郁の代わりに死んでくれよ!

心の底からそう叫びたかった。
でもそれを止めたのは郁だった。
郁が拳を開いて雄太の手をもう1度握りしめたのだ。

「楽しかったよね、私達」
「え……?」
「雄太とつきあい始めて、私はずっとずっと楽しかったよ」
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