生贄教室
もう、これ以外に生贄を選ぶ手立てはなかった。
「最初に郁が選んで。ね?」
美麗の声かけにようやく視線をさまよわせる反応を見せた。

「郁?」
声をかけると、やっと郁と視線がぶつかってホッと胸をなでおろした。
恋人を失ってしまった悲しみっで、完全に殻に閉じこもってしまったかと心配していたのだ。

自我がなくなって気が狂ってしまえば、きっと否応なしに次の生贄にされる。
「あみだくじ……」
郁がぽつりと呟いた。

「そうだよ。ほら」
美麗が理沙が作ってくれたあみだくじを差し出した。

それを見た郁の目がみるみる大きく見開かれた。
「生贄になるのは私のはずだった。あたりを引いたのは、私だった!」
また錯乱したように声を張り上げて頭を抱える。
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