生贄教室
美麗は慌てて郁の体を抱きしめた。
「大丈夫だよ郁。それはもう終わったことなの。次の生贄は別に郁じゃないんだから!」
なだめるためにそう言った瞬間だった。

突如郁は暴れるのをやめて静かになった。
落ち着いてくれたのかと思ったが、そうではなかった。

郁は何度もまばたきを繰り返して「そっか、次の生贄になればまた雄太に会えるんだ」と言ったのだ。
「郁、なに言ってるの?」
美麗は驚いて聞き返す。

「だってそうでしょ? 雄太はあの化け物に食べられて死んだ。それなら私も同じようにして死ねば、すぐに雄太に会いに行けるんだよね?」
そんなのわからない。

死んだあとのことなんて知らない。
美麗は愕然として郁を見つめるしかなかった。
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