生贄教室
郁は自分の考えを信じ込んでいるようで、みるみる頬に赤みが差してきた。
「それなら私、またもうすぐ雄太に会えるってことだよね? それならなにも怖くないよ」
あははっと声を上げて笑う。

その笑顔は壊れていた。
壊れたおもちゃみたいだった。
「郁……」

「あみだくじなんてしなくていい。そんな必要はないよ。だって今度は私の番だもん」
郁はまるでそれを心待ちにしているかのように鼻歌を漏らす。
美麗は軽い恐怖を感じて郁から距離を取った。

「大丈夫か?」
一部始終を見ていた昂輝が心配そうに声を掛けてくる。
美麗は左右に首を振った。

郁はこわれてしまった。
雄太を失って、なにもかもを自分で壊してしまったんだ。

「行こう」
昂輝は美麗の手を握りしめて、そっと郁から離れたのだった。
< 183 / 222 >

この作品をシェア

pagetop