生贄教室
これから私は雄太と出会う。
化け物の体を通して一体化するといってもいいかもしれない。
だから、怖くない。

郁は目を閉じて化け物に食べられるのを待った。
目の裏に浮かんでくる光景はどれも楽しい、雄太との思い出ばかりだ。

「雄太……すぐに会いに行くね」
郁が呟いたとき、化け物の破壊行動が始まった。
体育館はほぼ全壊してしまったから、今度は校舎を攻撃しはじめているようだ。

ガンガンとなにかを叩くような音。
それと共にガラガラと瓦礫が散乱していく音が耳に届く。
幸いここは本館から少し離れているから、直接的な被害はない。

だけど、離れていると言っても渡り廊下一本分の距離だ。
本館が倒壊すれば被害は必ず降り掛かってくる。

郁は目を開けて「ここにいるよ!」と、声を張り上げた。
大きく鳴りすぎた化け物には3回のベランダが見えていないのだ。
生贄はここにいる。
< 187 / 222 >

この作品をシェア

pagetop