生贄教室
あんたのエサはここにいると、教えないといけない。
「校舎を壊す必要なんてない! ここにいる!」
しばらく声を張り上げていると、ようやく化け物が動きを変えた。

膝を曲げてかがみ込み、ベランダにいる郁に視線を向ける。
郁はその瞬間微笑んだ。
大丈夫、私はやっぱり怖くない。

笑顔を浮かべたままの郁へ化け物が手をのばす。
その手も大きく、ベランダを覆い尽くすくらいになっている。
人1人食べたくらいで満足するのか少し不安がよぎった。

だけどそれだけだった。
次の瞬間には化け物の手によって握りつぶされ郁の意識は途切れていた。
「すぐに会えたね、雄太」
郁は最後に確かに雄太の笑顔を見たのだった。
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