生贄教室
☆☆☆

美麗と昂輝は隣の部屋に移動してきていた。
S組の隣の教室は空き教室になっていて、机も椅子もないガランとした部屋だった。

そこに持ってきた毛布をひいて、ふたりで並んで座った。
近い距離に美麗は緊張して心臓はドキドキと高鳴り始める。

「美麗は俺と付き合って楽しかった?」
その質問に突如切ない感情が湧き上がってくる。

過去を振り返ってお別れをするような、本当の別れがすぐ近くまで来ているような感じがする。
「もちろん、楽しかったよ」
美麗は切なさを消し去るように明るい声で答えた。

まだ昂輝が生贄になると決まったわけじゃない。
化け物はここでいなくなるかもしれないし、誰も食べないかも知れない。

そんな可能性はごくわずかだとわかっていたけれど、美麗は希望を捨てていなかった。
「つきあい始めたときは恥ずかしかったよな」
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