生贄教室
「俺と付き合ってくれないかな」
いつもの放課後の図書室。
他にも利用者がいる中で昂輝はささやくような声で言った。

美麗は一瞬その言葉を聞き取れなかったけれど、もう1度聞き直したときに即答した。
「もちろん」
むしろ告白が遅かったと感じるくらい、ふたりはのんびりとつきあい始めた。

平日は図書室や図書館、または昂輝の家でみっちり勉強をするため、甘い雰囲気になることはほとんどなかった。
だけど気晴らしにと休日は勉強のことを忘れてふたりで色々な場所へ行った。

お小遣いが入れば買い物や映画館にも行ったし、お金がないときは近所の公園でブランコに乗って会話した。
どこへ行ってもふたりなら楽しかった。
「美麗と付き合えて本当によかった」

昂輝が美麗の手を握りしめる。
美麗も、昂輝の手を握りしめた。
その瞬間切なさが美麗の胸を刺激した。
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