生贄教室
それは高校受験が終わってからだと、なんとなく自分たちで線を引いていたからだ。
そんなふたりの距離がグッと縮まる。

互いの息がかかる距離まで近づいて、美麗はキツク目を閉じた。
こんなのがファーストキスだなんて思いたくない。
まだまだこれから何度でもなんでもできると思いたい。

でも違う。
これが最初で最後になるんだ。
涙がこぼれて口に入った。

しょっぱさに顔をしかめた時、昂輝の唇の柔らかさを感じた。
ふわりとして、暖かくて、優しい感触だ。
昂輝はすぐに身を離して照れ笑いを浮かべる。

美麗は大きな声で泣き出してしまいそうになるのをグッと押し込めて、昂輝の胸に自分の顔をうずめたのだった。
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