生贄教室
ふたりしか残っていない今、よりそっているしかない。
「S組ってさ、ちょっと不思議なクラスだったよね」
理沙は美麗の隣に座って呟いた。

進級してからのことを思い出すように視線を斜め上に向ける。
「みんな勉強ができて、いい子ばかりだった気がしてたけど、今回のことで色々と見えてきたし」

「……いい子ばかりじゃなかったよね」
鼻をすすって美麗が返事をする。
まともに返してくれたことが嬉しくて、理沙は美麗へむけて笑った。

「本当だよね。こんなに問題のあるクラスだとは思ってなかった」
「でも、案外それが普通なのかも。みんな本当の顔は見せずに暮らしてる。そうした方が、スムーズに生活できるから」

美麗の言葉に理沙は頷いた。
そうかもしれない。

誰も彼もが自分の意思を貫き通そうとすれば衝突する。
衝突するばかりでは前に進むことはできない。
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