生贄教室
☆☆☆

「これが、その物語だよ。私の本性」
理沙は机の中から一冊のノートを取り出して美麗に手渡した。
美麗はそれをジッと見つめる。

「読んでもいいけど、他の人には見せないでね」
理沙はそう言うと、ベランダへ向かう。
「理沙!」

呼び止められて一度振り向くと、美麗がノートを胸の前で抱きしめていた。
「これくらいのことは、誰でもやるよ。理沙はそんなに悪い人じゃないと私は思う」
美麗の言葉に一瞬呆然として、それから理沙は微笑んだ。

「ありがとう」
美麗ならきっとそう言ってくれると思っていた。
だから作品の中でも美麗と自分だけはなんのお咎めもなしにした。

思い出して軽く笑った理沙は、もう何の迷いもなくベランダへ出たのだった。
< 213 / 222 >

この作品をシェア

pagetop