生贄教室
いや違う。
と、すぐに理解する。
これは残り3機になったヘリの風だ。

どうにか強風に負けないように屋上へ出た時、ヘリが1機しか見えないことに気がついた。
さっきの出来事で2機は退散したのかもしれない。
残り1機は状況を把握するためにも飛ばしておく必要があるんだろう。

1機でも残っていれば、それでいい。
先生はヘリへ向けて大きく手を振った。
すると相手はすぐに気がついてくれた。

『外は危険です! 中へ戻ってください!』
必死のアナウンス。
だけどすぐに戻るわけにはいかなかった。
先生は全身を使ったジェスチャーで生徒たちを家に帰してほしいと訴えた。

だけど答えは非情なものだった。
『それはできません。街の人達はすでに避難しています、家に戻っても、誰もいません』
「そんな……」

それはわかっていたはずのことだった。
もうこの街には自分と子どもたちしか残されていないのだ。
完全孤立状態だ。
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