生贄教室
妙子が文句を口走る。
「元々あいつに頼るつもりなんてねぇよ。自分たちでなんとかしねぇと」
利秋が立ち上がってまた窓の外を見つめる。

グランドでは人間ふたりを食べた化け物が、今はおとなしく座り込んでいる。
食事をする前にはサッカーゴールを紙みたいにグシャグシャに曲げて破壊していたのに、あの衝動は消えてしまったみたいだ。
「食料と水を運んで来たぞ」

ドアへ視線を向けると、池田と昂輝がそれぞれ大きな箱を抱えて戻ってきたところだった。
「ありがとう」
美麗がすぐに駆け寄って池田からダンボールを受け取った。

それには飲み物が入っていたようで、ずっしりと重たい。
「保存食だけど、最近のはどれも美味しいはずだ」
池田が段ボール箱を開けて中を改める。

そこには乾パンや水で作れるカレーライスの他に、甘いお菓子も沢山詰め込まれている。
「私チョコレートが食べたい!」
甘い匂いに一番に反応したのは郁だった。
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