生贄教室
左右に首を振り、拳についた血を拭う。
それでもなかったことにはならない。
やってしまったことは消えない。

みんなの視線が痛いほどに突き刺さって、妙子の泣き声が轟音のように鼓膜を揺るがす。
「信じて! 僕はこんなことしない! 僕は暴力なんてしない!」

だけど誰も何も言わない。
いつも冷静に周りを見ている恵子でさえ、今は清と距離を開けていた。
その目を彩っているのは軽蔑の色。

清は愕然としてみんなを見つめるしかできなかった。
そこに後ろから近づいてくる人の気配があった。
あぁ、よかった。

誰かわからないけれど、まだ僕のことを信じてくれる人がいる。
だったら助けを求めよう。
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