生贄教室
そんな中、グラウンドに座り込んでいた化け物がゆらりと重たい体を持ち上げた。
その異様な気配に気がついた清が小さく息を飲んで振り向く。

化け物が怠慢な動きで立ち上がろうとしているのが見えた。
真っ黒な闇で塗りつぶされたようなその姿に、全身に鳥肌が立つ。

自分が今からあの化け物に食われるのだと思うと吐き気がするほどの恐怖がせり上がってくる。
喉もとで悲鳴がほとばしった。

それは甲高い悲鳴と低い悲鳴が混ざりあったような、自分でもどう発音したのかわからないような声だった。
「来る来る来る来る!」

本当はまだ立ち上がっただけの化け物だったけれど、清にはそれがゆらりと動いたように見えた。
教室の窓へ視線を向けると、他の生徒たちも化け物の動きに気がついて窓に近づいてきている。

「助けて! 助けてみんな!」
清は窓を拳で叩いて叫び声を上げた。
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