生贄教室
声はかすれてあまり聞こえなかったかもしれないけれど、みんなだってこっちを見ている。
その顔に、ゾッとした。

みんな、知っている顔だ。
だけど知らない顔に見えた。

笑っている顔や怒っている顔はひとつもなくて、みんな能面みたいに無表情に見えた。
心を殺しているのがわかる。

心を殺すことで、自分を生贄に差し出すことを決めたのだと、わかってしまった。
「助けて……」

声が弱まってしまった。
みんなは僕を見ていながら見ていない。
どれだけ声を張り上げて助けを求めても、もう遅い。
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