生贄教室
なにか言いたい。
いますぐ逃げ出したい。
そんな感情ばかりがグルグルと頭の中を回って、実際にはなにひとつ動くことができなかった。

硬直してしまった清の目の前に化け物の顔があった。
その顔には目も鼻も口も見当たらない。
全部漆黒に塗りつぶされていて見ることができない。

だけど視線がぶつかった。
あるかどうかわからない目と目が、確かにあった。
その衝撃が全身を貫いたとき、化け物の大きな手が清の体を掴んで持ち上げていた。

痛いくらいに締め上げられて手の中で清は呼吸が苦しくて悲鳴もあげられなかった。
たかだかと持ち上げられた時、今までの人生が走馬灯のように蘇ってきた。
化け物が大きく口を開く。
< 75 / 222 >

この作品をシェア

pagetop