生贄教室
今までことの成り行きを見守っていた郁だけれど、さすがに驚いている。
「おいおい、まさかの小学生って」
仁がわざとらしく後ずさりをして利秋から離れる。
「ね、年齢的には5つしか違わない。別に、珍しくねぇだろ」

反論する姿が余計に立場を悪くしていく。
好きな子を助けたいがための行動。
それなら、もっと他にやり方があったはずだ。
すぐに児童相談所にでも行けば、清はおとなしくなったかもしれないのに。

どうしても自分の手で助けたかったんだろうか。
自分が花子ちゃんのヒーローになるために?
想像した妙子は吐き気を感じた。
なんて身勝手な考えた方なんだろう。

利秋のせいで花子ちゃんへのあたりが強くなっていたことは考えるまでもないことなのに。
そう考えていると時計の針がカチッと音を立てたのが聞こえてきた。
時刻は8時30分を回ったところだ。

まだ化け物はおとなしいけれど、もうすぐまた暴れ始める。
それまでに決断しないといけない。
利秋を生贄にするということを……。
< 96 / 222 >

この作品をシェア

pagetop