悪女の汚名返上いたします!~悪役聖女として追放されたのに、私を嫌っていたはずの騎士がなぜか甘々に…⁉~
「……なんだと?」

 眉をひそめるフェルナンに、ベアトリスはしみじみと続けた。

「他人と比べるのはやめたわ。だって、自分が辛くなるだけだもの」

「自分が辛くなる、か。たしかに……そうだな」

 なにか思うところがあったようで、フェルナンは腕組みしてそう言ったきり、一言もしゃべらなくなった。


 ✻  ✻  ✻


 小腹が満たされて眠くなったようで、向かいの席に座るベアトリスがうたた寝を始めた。それを見て、子供みたいな奴だな、とフェルナンは苦笑する。

 婚約者として紹介された時、フェルナンはベアトリスではなく、その後ろに控えていたセレーナに目を奪われた。

 泣いている彼女を偶然見かけ、密会を繰り返すようになってからは、守ってやりたいという想いが募るばかり。

 妻にするのなら、可愛げのないベアトリスではなく控えめで健気なセレーナの方が良いのに……と何度思ったことか。

 だが、理由もなく国王(ちちうえ)の決めた縁談を破棄できない。

 
 フェルナンはセレーナに別れを告げようとしたが、その日、突然の相談に出鼻を(くじ)かれた。

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