悪女の汚名返上いたします!~悪役聖女として追放されたのに、私を嫌っていたはずの騎士がなぜか甘々に…⁉~
 部屋に押し入ったフェルナンは、すぐさま驚きのあまり言葉を失い立ち止まった。
 
 なぜなら、あの気丈なベアトリスが両目からぽろぽろと涙を流し、まるで親の仇のように自分を睨み付けていたからだ。

「だましたわね……」

「だっ、だました? なんのことだ?」
 
 こちらをご覧ください、とユーリスに手渡されたのは今日の夕刊だった。
 
 新聞の一面を飾る【バレリー元伯爵失踪】の大見出しを見て、フェルナンは絶句する。
 

【呪具に関与した罪で処罰されたバレリー元伯爵が、監獄への護送中に失踪していたことが判明。同行していた騎士一名の遺体が見つかった。なお、元伯爵とその他の騎士の消息は、依然として不明である】

 
「これは……」

「お父様の話を出すたび、殿下が言葉を濁していた理由がやっと分かりましたわ」

「ベアトリス、それは……」

「明日の夜会まで時間をください。今日のところはお引き取りを」
 
 そう言ってベアトリスは顔を背けた。

 なにも言えずに立ち尽くしていると、ユーリスは丁寧でありつつも有無を言わせぬ力強さでフェルナンを追い出し、無慈悲に部屋の扉を閉ざした。
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