悪女の汚名返上いたします!~悪役聖女として追放されたのに、私を嫌っていたはずの騎士がなぜか甘々に…⁉~
 会場を後にしたふたりは、人払いを済ませた部屋で再会を喜び抱き合う。

「君のおかげで助かった」
 
「お役に立てたのなら……嬉しいです」

 彼女のいじらしい姿を見ると、やはり自分が好きなのはセレーナなのだと実感する。
 
「わたし……もう、殿下と離れたくありません……」

「俺もだよ、セレーナ」

「それでは……身代わりは、もう終わりで……良い、ですよね?」

 フェルナンがうなずくと、セレーナは嬉しそうに微笑み涙を流した。

「泣かないでおくれ」

「すみません……わたし、とても怖くて……あの子は、いつもわたしの大切なものを奪うから……殿下の心がベアトリスに向いてしまうんじゃないかと……」

 セレーナが不安そうにこちらを見上げ、フェルナンの手を取って婚約指輪を撫でる。

 内心、ぎくりとした。
 事実、ベアトリスに心が傾きかけ、隣にいて欲しいと願っていたからだ。
 
 フェルナンは不埒(ふらち)な己の心を隠すため、わざとベアトリスのことを悪しざまに罵った。
 
「やめろよ。あんな自己中心的で高飛車な女、俺が好きになるわけないだろう。今だって、俺が大変な思いをしているのに、まったく役に立たない!」

< 158 / 231 >

この作品をシェア

pagetop