悪女の汚名返上いたします!~悪役聖女として追放されたのに、私を嫌っていたはずの騎士がなぜか甘々に…⁉~
「ちょっと、笑っていないで答えてよ」

「ベアトリス、さようなら……今度こそ、もう会わないわね……うふふふふ」
 
 ダメだ、全然話がかみ合わない。
 
 こちらの質問に一切答えず、微笑しながら自分の言いたい事だけをしゃべり続けるセレーナは、まるで壊れた人形のようでひどく不気味だ。

 彼女と話していても埒があかないと思ったベアトリスは、フェルナンに直接聞くべく立ち上がった。
 
 それをセレーナが「待って……」と引き留める。

「実はね、貴女にお土産を持ってきたの……」
 
 薄気味悪い笑みを浮かべたセレーナが、手元の紙袋からボトルを取り出す。

「葡萄酒? そんなの私は飲まないわよ」
 
「あぁ、そうだったわね……貴女は未成年だしお子様舌だから、お酒は飲めないわよね……かわいそう……本当に、とーってもかわいそう! うふっ、ふふふっ……」

「ねぇ、さっきからなんなの? 意味が分からなくて本当に気持ち悪いわ。ポール、彼女を追い出してちょうだい! …………ポール?」

 普段ならすぐさま「はい!」という返事が聞こえてくるが、今日は数秒待っても応答がなく、ベアトリスは不思議に思ってポールの方を見た。

 彼は無表情で一点を見つめ、うつむき加減で黙り込んだまま動かない。
 
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