悪女の汚名返上いたします!~悪役聖女として追放されたのに、私を嫌っていたはずの騎士がなぜか甘々に…⁉~
 身体のあちこちを打ち付けて、痛みに顔を歪めながら上半身を起こす。
 
 するとその時、扉が外側から開き、真っ暗な視界に月明かりが差し込んだ。
 
 もしかして助けが来たのかしら、という期待も虚しく──そこに立っていたのは、武装した見知らぬ男たちだった。
 
 ベアトリスは首根っこを掴まれ、ぞんざいに馬車の外に引きずり出される。
 
 
(え……? どうして、騎士が誰もいないの……?)
 
 
 辺りをキョロキョロ見渡すと、周りを取り囲む男たちが嘲笑しながら言った。
 
「このタトゥーを見せたら、みーんな逃げちまったぜ。ハハッ、騎士なんざ臆病者ばっかりだなぁ!」
 
 男はそう言いながら、自身の右腕に刻まれたドクロの刺青を見せびらかす。
 
(……この人たち、まさか……)
 
 ドクロの刺青は、国内外問わず汚れ仕事を一手に引き受ける『暗殺傭兵』の証。

 強盗、誘拐、暗殺、人身売買。金のためなら何でもやる殺人鬼にぐるりと取り囲まれ、ベアトリスの恐怖心は最高潮に達していた。
 
 勝手に身体が震え、歯がかみ合わずガチガチと音を立てる。

 
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