悪女の汚名返上いたします!~悪役聖女として追放されたのに、私を嫌っていたはずの騎士がなぜか甘々に…⁉~
 ベアトリスは手の甲で涙を拭い顔をあげた。
 
「子供みたいに泣いてごめんなさい。もう大丈夫」
 
「そんなに擦るな、赤くなる。これを」

「……うん、ありがとう」
 
 差し出されたハンカチで目元を押さえながら、ベアトリスは倒れ伏す傭兵に視線を向けた。

「あの人たち、死んでいるの?」

「いや。全員、気絶しているだけだ。ヤツらには聞きたいことがあるから、殺しはしない」

 ユーリスはそう言いながらベアトリスの首に付けられていた追跡魔道具を手際よく外し、背後の暗闇に向かって声をかけた。
 
「俺はこれからブレア領に向かう。お前たちはこの暗殺者らを捕縛せよ」
 
「かしこまりました、ユーリス様」
 
 返事とともに、暗闇から黒ずくめの男たちが数名現れる。おそらくユーリスの部下だろう。彼らは命令に従いテキパキと暗殺傭兵を拘束し、運んでいく。
 
 さらに部下のひとりが、どこからともなく馬の手綱を引いて近づいてきた。
 
「じゃあ、行こう」
 
 ユーリスはそう告げた直後、ベアトリスをひょいと横抱きに──いわゆる“お姫様だっこ”で持ち上げた。

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