悪女の汚名返上いたします!~悪役聖女として追放されたのに、私を嫌っていたはずの騎士がなぜか甘々に…⁉~
 彼の腕にすっぽり包まれ、抱きしめられるような密着した体勢に、ベアトリスは居心地が良いような、悪いような複雑な気持ちになっていた。

 ユーリスに触れられるのは嫌じゃない。
 なのに心臓が異様に高鳴り、身体がムズムズして逃げ出したい気分になる。


「ベアトリス、それじゃあ振り落とされる。もっとしっかり俺にしがみついて」

「う、うん……」

 ベアトリスは言われたとおり、恐る恐るユーリスの服の端を摘まんでみる。

「……こ、こう?」

 ユーリスは『それじゃ全くダメだな』といわんばかりに片手でグイッとベアトリスの体を引き寄せた。途端に心臓がドクンと跳ねる。

 しがみつけと言われたとおり、ベアトリスはユーリスの腰の辺りを掴んだり後ろまで手を回してみたり。
 ちょうどよい場所を探し求めてモゾモゾ手を動かしていると、彼が「くすぐったいよ」とクスクス笑った。

「だって、しょうがないじゃない。どこを掴めば良いのか分からないんだもの」
 
 文句を言いながら顔をあげると、近距離に整った顔があって思わず息をのむ。
 バッチリ目が合った瞬間、ベアトリスはどうして良いのか分からず勢いよく下を向いた。

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