悪女の汚名返上いたします!~悪役聖女として追放されたのに、私を嫌っていたはずの騎士がなぜか甘々に…⁉~
「とにかく! 決行日は目前。全員、気を引き締めて頑張るわよ!」

「了解であります! 姉御!!」

 果たしてベアトリスは、無事に脱獄して復讐を遂げられるのか。

 か弱いヒロインからますます遠ざかる姉御聖女の活躍は、まだまだ続く──!


 ✻  ✻  ✻
 

「ベアトリス・バレリー。脱獄未遂により、刑期の延長を言い渡す!」


 結論から言うと、ベアトリスたちの脱獄計画は密告により失敗に終わった。

(どうやら私が参加する前から、内部にスパイが紛れ込んでいたようね)

 さすが、犯罪者を収監する労働施設。脱走や暴動を未然に防ぐため、看守はあらかじめ囚人を買収し、情報提供させていたようだ。

看守(てき)を甘く見ていたわ)
 
 脱獄はかなわず、それどころか刑期は延長。ベアトリスは要注意人物としてマークされ、復讐がさらに遠のいた。

 絶望に次ぐ絶望に、いくら鋼のメンタルを持っているとはいえ落胆を隠せない。
 
 さらに追い打ちをかけるように、ベアトリスの身体に異変が起きていた。

 
「おい、怪我人だ! すぐに救護室に行け」

 看守に声をかけられ、ベアトリスは洗濯の手を止めた。

「今日は外からお医者様が来ているはずでしょう?」

「その医者の到着が遅れているから、お前を呼びにきたんだよ!」

「そう、分かったわ」

 ベアトリスは冷水で真っ赤になった手をエプロンで拭い、怪我人が待つ救護室へ向かった。ベッドの上では、年配の男性が腕から血を流し、痛みに(うめ)いている。

「どうした? 早く治してやれ」

(もうやっているわよ!)
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