悪女の汚名返上いたします!~悪役聖女として追放されたのに、私を嫌っていたはずの騎士がなぜか甘々に…⁉~
「私、前回も前々回も言ったわよね。お茶の温度はちゃんと確認してって。こんな煮え湯を飲まされたら、火傷するじゃない! 相手が私だったから許されるけど、こんな物を他の方にお出ししたら大変なことになるわ!」

「すっ、すみ、ません……」

「謝らなくていいから。同じミスをしないように、よく考えて慎重に行動して」

「ああ……お茶すらも、満足に淹れられず……ごめんなさ、ぃ……」
 
「いや、だから、もう泣かなくていいから」

 火傷するほどの熱湯に驚きはしたものの、それほど強く言ったつもりはなかったのに、セレーナは身体を震わせて号泣してしまった。
 
 いつもそうだ。ベアトリスは建設的な話し合いがしたいのに、義姉が泣き出してしまうから会話にすらならない。
 
 周囲は『ほら、また虐めて泣かせてるよ』と小声で囁き、セレーナに同情の眼差しを、ベアトリスには非難の陰口を向けてくる。

(……私は、いっつも悪者ね)

 グスグスと鼻をすすり、いつまでも泣き続けるセレーナを見て、ベアトリスは『こっちが泣きたい気分だわ』と痛むこめかみを押さえた。

「あのね、セレーナ。子供じゃないんだから、小さなことでいちいち泣かないでって、いつも言っているわよね?」

「ええ、ごめん……なさい……」

「これじゃあ、私が虐めているみたいじゃない」

「……うぅっ……すみ、ません……」

「はぁ。もういい、疲れたわ。みなさん出て行ってちょうだい」
< 7 / 231 >

この作品をシェア

pagetop