悪女の汚名返上いたします!~悪役聖女として追放されたのに、私を嫌っていたはずの騎士がなぜか甘々に…⁉~
 振り返りもせず、ユーリスに「行くわよ」と目配せして出口へと一直線に進む。
 
 扉の前に立った時、背後から「待て!」とフェルナンの焦った声が聞こえてきた。
 
 よし!計算通りだわ、とベアトリスは内心ほくそえむ。
 
 
「分かった。お前の言う『お願い』とやらを聞いてやろう。ただし、ひとつだけだぞ」

「五つでお願いします」

「はぁ?! 囚人の言い分を五つも聞くわけがなかろう、馬鹿者め!」

「では、四つ!」

「ダメだと言っているだろうが、強欲者! 譲歩しても、せいぜいふたつが限度だ」

「そこをなんとか! 殿下、もう一声!! 三つでお願いいたします!」

「もう一声って、俺は露天商じゃないんだぞ! 値切り交渉なら余所(よそ)でやれ!」

「では、この件はなかったことに」

「くっ……小癪(こしゃく)な奴め……。今回は致し方ないか……それで、その三つの条件とはなんだ? 言ってみろ」

 椅子に座り直したベアトリスは、淡々と要求を述べ始めた。

「ひとつ目、私の父にも恩赦をお与えください」

「……いいだろう」
 
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