エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
最悪の別れ
「悪いけど、ほかに好きな人ができたの」
信じられない、と声に出されなくてもわかるほど目を丸くした彼に向かって言い放つ。
外交官という職業柄か、人前では上手に感情を操る彼が、今は素の驚きと衝撃を顔に浮かべていた。
相手に心の内を読まれるようでは交渉などうまくできない、と皮肉っぽく言っていたのに、自分の言葉を忘れてしまったのだろうか。
あるいは、忘れてしまうほど私のひと言にショックを受けたのか。
後者だろう、というのは自分でもわかった。
こんな残酷な言葉、もし私が彼に言われたら頭が真っ白になってしまう。
「じゃあ、俺たちの婚約はなかったことになるのか?」