エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
 意地悪な声と指だけで、どんどん余裕を奪われていく。

 逃げるとしたら今しかないのに、勝手に動いた腕がすがるように北斗を抱き締めた。

「どうしてほしい?」

 悪魔のほうがよっぽど良心的なんじゃないかと思うほど、艶めかしく危ない声で囁かれる。

「やめないで……」

 一度許せば、ずっと溺れ続けると理解したうえで、ついに本心がこぼれ出た。

 しがみついた北斗がくっと喉を鳴らして笑い、怖いくらい優しく私を撫でる。

「もう、やめてと言っても聞かないからな」

 うなずいた私の耳に、彼が自身のベルトを緩める衣擦れの音が届いた。



 目を覚ますと、いつの間にか朝だった。

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