エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
『それに、彼と出会ったのはイタリアだったんです。旅行中、困っている私を助けてくれたのが彼でした』

『そういうのいっぱい聞きたいです』

 無邪気に笑う先生は、正直に言うとあまり年上に感じられない。

 でも彼女のそんな屈託ない笑みがかわいらしくて好きだった。

 どうも私はこういう顔で笑う人に弱いようだ。

『えーっと……』

 続けて話そうとするも、どの単語を組み合わせれば言いたいことを伝えられるかわからない。

「先生、『ひとり旅で迷子になった』はどう訳せばいいですか?」

「それはね――」

 先生はわからないことをわからないと伝えても決して怒らない。

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