エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
「いや……」

 なんとも煮え切らない返答に困ってしまう。

 私のそんな反応を悟ったのか、呼吸を整えた北斗が大きな息を吐いた。

「中二階から下りてきた。君が見えたから」

 このマンションは少し変わっていて、中二階が存在する。

 休憩スペースのようになっており、テーブルやソファ、カウンターが置かれている。

 コーヒー片手に新聞を読む人や、カードゲームで遊ぶ子どもたちの姿をたまに見かけたけれど、普段、北斗がそこを使っているという話は聞いていない。

「もしかして……」

 私の帰りを待っていてくれたの?

 喉もとまで出かかるけれど、違った時の気まずさを考えて呑み込む。

「それは?」
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