エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす

 北斗が私の持つお土産に目を向けた。

「あ、これ? もらいものなんだけど……」

 思わず泣いてしまった私に、百合先生たちは勇気をくれた。

 ここでためらったら申し訳ない。

「一緒に食べない?」

「……え」

 北斗が虚を突かれた表情で固まる。

「コーヒー淹れるから……」

「いや、別にそれはどちらでも……」

 誘い方が突然すぎただろうか。

 北斗の戸惑いがはっきりと伝わってくる。

「……とりあえず家に帰ろうか」

 うなずいて北斗の後に続く。

 デートの時は手を繋ぎたがったのに、今は繋いでくれないのが私の不安を煽った。



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