エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
 リビングのソファで横並びになり、コーヒーと一緒にチョコのテリーヌを味わう。

 でもいつも話しかけてくることが多い北斗が、全然喋ろうとしない。

 なにやら考え込んだ様子で黙々とテリーヌを消化している。

「甘いものは苦手だっけ?」

 彼がこんなに黙っているのは珍しい気がして、自分から話しかける。

「別に。おいしいよ」

 あまり嘘をつかない人だと思っているけれど、どこか中身のない感想に聞こえた。

 普段は大げさに褒めたり、彼らしい遠回しな物言いで絶賛するからだと、やや遅れて気づく。

 その気の使い方がますます気まずさを煽り、過去のことを謝りたいのに言葉が出てこなくなった。

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