エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
「あ、あの」

「ん?」

「……ううん、おいしいね」

 さっきおいしいと言われたばかりなのに、日和って同じ言葉を返してしまう。

 北斗の顔に、笑っているのか困っているのかわかりづらい複雑な表情が浮かぶのも当然だ。

 あのときのことを謝りたい、と話を切り出すだけのことがこんなにも難しい。

 いつもの調子で話してくれないから謝れない、なんて情けないにもほどがあったけれど、当時を思い出すだけで泣きそうになるのもあり、自分自身が思い通りにならなくて嫌になる。

「ええとね」

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