エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
 答えた瞬間、北斗が大きな溜息をついた。

 驚いて顔を上げると、なんだか苦々しい顔をしている。

「だいたい掴めてきた。それとキスになんの関係があるのかだけ、わからない」

「……夫婦円満に過ごすためにはこうするといいんだって。それで――」

 今こそ謝るチャンスだと、その流れのまま言おうとしたのに、北斗の苦い表情が納得の笑みに変わるのを見て勢いを削がれた。

「気が合いそうな人たちだな」

「そう?」

 北斗がそう言ってくれたから、やっと肩の力を抜けた。

 隠し事をしていたと知っても怒っていないらしい。

 むしろ、私より北斗のほうが安堵しているように見える。

< 159 / 245 >

この作品をシェア

pagetop