エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
「キスだけで足りるわけがないだろう?」

 さっきとはうってかわって上機嫌になった北斗に押し倒される。

 やわらかなソファがぎしりと音を立て、私の身体を包み込んだ。

 無邪気なキスが数えきれないくらい落ちてくる。

「そんなにたくさんしないで……」

「夫婦円満に過ごしたがったのは君だ。だったら、キスを受け入れてもらわないと困る」

 うれしいけれど、なんだか違う気がする。

 根本的な問題はなにも解決していないのだ。

 でも、今の北斗はとてもうれしそうに見える。

 ……どうして?

 あなたは私を許せないと思うから、復讐するんじゃないの?

 愛があって結婚したわけじゃ、ないんじゃないの……?

 口にしたつもりの問いかけも、伝えたかった謝罪も、彼の唇に呑み込まれて消えた。

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