エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
「それに察しが悪い。俺が怒っているとすれば、ひどい言葉を投げつけられたことじゃなく、助けを求めてくれなかったことに対してだ」

「だって、言えないよ。絶対助けてくれるってわかってたから……」

「だから馬鹿だと言っているんだ」

 勢いよく抱き締められ、呼吸が止まった。

「俺の存在意義を奪うな。君のために苦労するなら本望だ」

「私が嫌なんだよ。自分の事情に巻き込みたくなかったの」

「それが夫婦だろう」

 ほろりと涙がこぼれた。

 鼻をすすって、北斗を見上げる。

「喜びも悲しみも分かち合うのが夫婦だ。知らなかったのか?」

「でも、まだあの時は……」

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