エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
 言いかけてから、細かい話をしたいわけではないと思い返す。

 深呼吸をし、自分の気持ちを整えると、なぜか笑えてきてしまった。

「最初からずっと、私を気遣ってくれてたんだね。復讐なんて言ったのも、利用するって言ったのも、全部私のための嘘だった」

「君も俺を嫌いだと嘘をついたんだからおあいこだ」

 またこぼれた涙を指ですくい取られる。

 彼の顔が近づくのを感じて目をつむると、閉じたまぶたに口づけが落ちた。

「君を泣かせて満足した。これで俺の復讐は終わりだ。……だからもう一度、やり直そう」

 顔を上げると北斗と目が合った。

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