エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
 夜空の深い色を集めたかのような黒い瞳にも、悲しみが宿っていた。

 私は今、彼をどうしようもないほど傷つけている。

 これ以上愛せる人はいないと思った相手なのに。

「別にそれでもいいなら結婚してもいいけど? その代わり、あなた以外の人と寝ても文句は言わないで。お互い、不倫は公認することにしましょ。あなたもいろいろ出会いが多いみたいだし、好きにしてくれて構わないから」

 嫌だ。彼が私以外の女性に愛を囁き、優しく微笑んでキスをするところなんて想像もしたくない。

 そんな気持ちを徹底的に押し込め、こぶしを握って手のひらに爪を突き立てる。

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