エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
◇ ◇ ◇



「もしもし」

 歩きながら電話をかけた先は母親だ。

『なに、北斗? こんな時間にどうかした?』

「純美と結婚することになった」

 結論だけ述べると、息を呑む音が聞こえる。

 短い沈黙の後、電話の向こうでごそごそという衣擦れがあった。

『稲里さんに会ってきたのか?』

 どうやら父が母と電話を替わったようだ。

「ああ」

『……そうか。お前が決めたことならなにも言わないが』

 俺の両親はどちらも純美と顔を合わせている。

 それも当然だ。俺と純美は婚約関係にあったのだから。

『本当によかったの?』

 少し遠い位置から母の声がする。

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