エリート外交官はワケあり妻を執愛で満たし尽くす
 当時は食事も手につかないほど傷ついたが、今となっては慣れない暴言と嘘で俺を拒んだ彼女をかわいいと思う。

 そこまでして、俺を自分の事情から守ろうとしたのだと思うと堪らない。

「なんにせよ、結婚を反対されないようでよかった。ふたりを説得する時間があるなら、結婚式の準備にあてたいからな」

『もう結婚式の話か。早いな』

「別に早くはないだろう」

 心の準備だけなら、五年前から整っている。

 本当は一方的に婚約破棄された後、すぐに純美と話す時間を取りたかった。

 しかしちょうどそのタイミングで、希望していたイタリアへの在外勤務に急遽空きができ、ほぼ指名される形で声がかかったのだ。

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